Vol.349 2022.2.22

音楽・美術の旅 メールニュース
 
Column

まだまだ遠いかな憩いの家 その4

そして最後に案内させていただくのが、右隅にヴェルディのシルクハットの絵を飾ってある音楽ホール(名誉サロン)である。建物のエントランス近くにある階段を上った2階の正面に位置する。

可動式の椅子は120脚も並べれば部屋を埋め尽くすことになる、あまり広くはないサロン風スペースながら、これまでに様々なコンサートが行われては、晩年をここで生きる客人らを喜ばせてきた。

時代やこの施設の管理体制によって取り上げてきたコンサートのジャンル、アーティストのレベルなど異なってはきたが、基本的にクラシック音楽をベースとした、いわば場にそぐうものが選ばれ演奏されてきた。また、ここでの客演も凄まじい。スカラ座をはじめ、現役で活躍する歌手や、演奏家たちによる小規模なコンサートが行われてきたのである。

時代を遡れば錚々たる名を連ねることになるのだが、ドミンゴ、カレーラス、ブルゾン、ヌッチ、ポリーニそしてムーティと、わたしの知るところだけでもこのような大スターたちがこぞって、アットホームな感じの名演を繰り広げている。そのすべてが先輩アーティストに敬意を払っての慈善コンサートというのだから、それにはこの憩いの家の生みの親、ヴェルディ本人も間違いなく微笑んでいるであろう。

わたし自身もここ10年ほどの間に、幾度かのコンサートを企画しては、ここヴェルディの客人の前で行ってきている。オペラ劇場やコンサートホール、また施設における催しなどをいくつか手掛けてきた自分にとって、ここ憩いの家でのコンサートはいつ時も特別なものであった。

ある時は、日本を代表するオペラ歌手とイタリア人のアーティストをジョイントさせて行い、時には、スカラ座で活躍してきたアーティストを絡めたコンサートもオーガナイズした。ドイツより訪れた日本人のオーボエ奏者をスカラ座のカルテットとの音源のリリースのために行ったもの、大阪からやってきたコーラスのグループがヴェルディに捧げたいからと行ったコンサートのマネジメントも務めたことがある。

いくつかのコンサートの中で最も感慨深いものを挙げるならば、迷うことなくソプラノ歌手として多くを魅了してきた、リナ・ヴァスタの歌声を選びたい。それはまさしく“天上の声”であった。彼女の歌うヴェルディが、プッチーニが、そして数々のナポリ民謡が、それを聴くことができなくなってしまった今も、しっかりと脳内の、いや、心のアーカイブに刻み込まれている。もちろん憩いの家(リナもここに居住)の客人たちも、彼女の歌声には喝采を送ってきた。

高齢のため歩けなくなってしまい、認知症の進んでしまった彼女と、コロナという高く厚い壁に閉ざされたこともあり2年半会えていない。今年の目標は、その彼女との再会にある。

コロナの終息の兆しはいままだ見えずにいるが、それでも彼女に会う夢は捨てずに歩いて行きたい。ヴェルディによって創造されたこの音楽の館が、一日も早く音楽を愛する人々に解放される日が訪れるよう祈りたい。

堂満尚樹(音楽ライター)
Instagram ぜひご覧ください!

音楽ツアーデスクのおすすめ情報♪
METライブビューイング《シンデレラ》

究極の「特等席」で世界最高峰のオペラ鑑賞を・・・ 

世界最高峰のオペラ座のひとつ、メトロポリタンオペラ(MET)は只今シーズンまっ盛り。METが世界に誇るオペラ公演を「特等席」で鑑賞できるのが、METライブビューイング。全国20ヶ所の映画館の大スクリーンで楽しむことができます。
今日ご紹介するのは、マスネの作品《シンデレラ》。誰もが知っている童話がオペラとなって生まれました。原作はフランス語ですが、今シーズンは英語・短縮版として登場!上映は3月4日~10日の1週間限定。きらめく音楽とおしゃれな演出が魅力のオペラです。
音楽ツアーデスクでも根強い人気のメトロポリタンオペラ鑑賞の旅。
来シーズン(2022年9月下旬~)には、海外鑑賞ツアー復活も期待したいところです!

(c)Jonathan Tichler/Metropolitan Opera

速報♪今後のオンラインツアー予定!

昨年10月に開催した、お家で楽しむオンラインツアー
「ワルシャワのショパンゆかりの地めぐり&コンクールを200%楽しむトーク&ライブ」に続くポーランドのオンラインツアー第2弾!

ポーランドの京都として知られ、世界中からの多くの旅人を魅了しつづける世界遺産の街、クラクフ。
お城や教会などの古都の美しい姿や歴史、食文化や芸術をご紹介するツアー、そして、コロナ禍のいま私たちに問いかける人間が歩んだ歴史・人権・社会について、アウシュビッツ強制収容所で昨夏実際に撮影した映像をご紹介しながら、歴史から学び平和について考えるツアーを企画しております。
詳細は近日中、本メルマガ、SNS、ホームページにて発表予定です。

音楽・美術の旅 SNSご紹介
フォロー、お友達追加をよろしくお願いいたします!

最新の情報はSNSでも随時ご紹介! 
フォロー、お友達追加をどうぞよろしくお願いいたします!
※LINEはスマートフォンからアクセスしてください(パソコンからはご覧いただけません)

♪スタッフブログも折々に発信しています。どうぞご覧ください♪   

メールマガジンの内容についてのお問合せ:
郵船トラベル音楽ツアーデスク
東京都千代田区神田神保町2-2 ミレーネ神保町ビル7階
Tel. 03-6774-7940
E-mail:


このメールは、郵船トラベル メルマガ(音楽・美術の旅)をご購読の方にお送りしています。
このメールは、送信専用メールアドレスから配信されています。ご返信いただいても回答致しかねますのでご了承ください。

発行:郵船トラベル株式会社 メールマガジン事務局
〒101-8422 東京都千代田区神田神保町ミレーネ神保町ビル
E-mail:

メールアドレスの変更、各メールマガジン購読の変更・追加は
マイページ にログインし、「会員情報の確認・変更」から行ってください。