そして最後に案内させていただくのが、右隅にヴェルディのシルクハットの絵を飾ってある音楽ホール(名誉サロン)である。建物のエントランス近くにある階段を上った2階の正面に位置する。
可動式の椅子は120脚も並べれば部屋を埋め尽くすことになる、あまり広くはないサロン風スペースながら、これまでに様々なコンサートが行われては、晩年をここで生きる客人らを喜ばせてきた。
時代やこの施設の管理体制によって取り上げてきたコンサートのジャンル、アーティストのレベルなど異なってはきたが、基本的にクラシック音楽をベースとした、いわば場にそぐうものが選ばれ演奏されてきた。また、ここでの客演も凄まじい。スカラ座をはじめ、現役で活躍する歌手や、演奏家たちによる小規模なコンサートが行われてきたのである。
時代を遡れば錚々たる名を連ねることになるのだが、ドミンゴ、カレーラス、ブルゾン、ヌッチ、ポリーニそしてムーティと、わたしの知るところだけでもこのような大スターたちがこぞって、アットホームな感じの名演を繰り広げている。そのすべてが先輩アーティストに敬意を払っての慈善コンサートというのだから、それにはこの憩いの家の生みの親、ヴェルディ本人も間違いなく微笑んでいるであろう。
わたし自身もここ10年ほどの間に、幾度かのコンサートを企画しては、ここヴェルディの客人の前で行ってきている。オペラ劇場やコンサートホール、また施設における催しなどをいくつか手掛けてきた自分にとって、ここ憩いの家でのコンサートはいつ時も特別なものであった。
ある時は、日本を代表するオペラ歌手とイタリア人のアーティストをジョイントさせて行い、時には、スカラ座で活躍してきたアーティストを絡めたコンサートもオーガナイズした。ドイツより訪れた日本人のオーボエ奏者をスカラ座のカルテットとの音源のリリースのために行ったもの、大阪からやってきたコーラスのグループがヴェルディに捧げたいからと行ったコンサートのマネジメントも務めたことがある。
いくつかのコンサートの中で最も感慨深いものを挙げるならば、迷うことなくソプラノ歌手として多くを魅了してきた、リナ・ヴァスタの歌声を選びたい。それはまさしく“天上の声”であった。彼女の歌うヴェルディが、プッチーニが、そして数々のナポリ民謡が、それを聴くことができなくなってしまった今も、しっかりと脳内の、いや、心のアーカイブに刻み込まれている。もちろん憩いの家(リナもここに居住)の客人たちも、彼女の歌声には喝采を送ってきた。
高齢のため歩けなくなってしまい、認知症の進んでしまった彼女と、コロナという高く厚い壁に閉ざされたこともあり2年半会えていない。今年の目標は、その彼女との再会にある。
コロナの終息の兆しはいままだ見えずにいるが、それでも彼女に会う夢は捨てずに歩いて行きたい。ヴェルディによって創造されたこの音楽の館が、一日も早く音楽を愛する人々に解放される日が訪れるよう祈りたい。
堂満尚樹(音楽ライター)
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